2025年7月30日水曜日

【有機水稲栽培②】秋ワラ処理のすすめ

 【有機水稲栽培②】秋ワラ処理のすすめ

(1)水稲収穫後の水田には大量のワラがある
水稲収穫後の水田に残されたワラの量は、収穫したお米の1.5倍の重さがあります。つまり、500㎏のお米が収穫できた水田には、750㎏のワラが残されています。この大量にあるワラを使用して土づくりを行います。

(2)ワラは発酵させないと害になる
水田に残されたワラは、窒素が不足しているために土壌微生物の力だけでは、発酵分解しません。ワラは新鮮なまま、翌年まで持ち越しますが、春から先に、水稲栽培のために、水田に窒素肥料が施用され、湛水されることで、嫌気環境で腐敗し、硫化水素や細菌がつくる毒素がつくられて、これを吸収した根の細胞は死んでしまいます。つまり、根痛みの原因となります。さらに怖いことは、田植えの時期は、まだ水が冷たく、土壌も冷えているため、腐敗菌も動けず、イネがそこそこ育った後に、水温・地温が上昇したことで、一気に腐敗菌の活動が活発になり、根が傷められて、生育が止まってしまう現象を招くことです。

収穫後、水田に残されたワラは、湛水をしない、まだ気温が高い秋の内に、発酵分解させて、糖や酸といったイネにとって無害な物質に作り替えてしまうことが必要なのです。ワラの主成分であるセルロースを納豆菌の仲間に発酵分解してもらい、糖や酸がつくれたら、この糖や酸は水に溶け、水と一緒にイネの根から吸収されて、生育を促進することになります。

秋ワラ処理は、水稲栽培にとって、生育促進に至る道と、生育不良に至る道の分岐点といえます。2つの道の終着点には、天国と地獄ほどの差があります。

(3)秋ワラ処理を実行するための6つの項目
秋ワラ処理の要は、ワラを発酵分解してくれる納豆菌の仲間の細菌です。日本で栽培されているイネにはワラ1本あたり1000万匹を超える納豆菌がすでについています。しかし、その天然の納豆菌だけでは秋ワラ処理はうまくいきません。うまくいかない理由は、窒素飢餓です。お米を収穫した後の水田には、ほとんど窒素が残っておらず、窒素が足りないために、納豆菌は増殖することができず、ワラを分解でいないのです。そこでワラの発酵分解を促進するために発酵鶏糞を施用します。発酵鶏糞が良い理由は、発酵鶏糞が、60℃という発酵温度でしっかり発酵できている場合、その発酵分解を担っているのは納豆菌の仲間の細菌だからです。そして発酵鶏糞にはセルロースが足りません。発酵鶏糞の中で発酵分解の中心を担っている納豆菌の仲間の細菌の体をつくる窒素源は豊富にありますが、生命活動のエネルギー源となるセルロースが不足しています。まさにワラを求めているところに、ワラ(セルロース)を与えるので、かなりしっかりワラを発酵分解してくれます。

ワラの発酵分解を担う納豆菌の仲間の細菌が活動し易い環境を与えてやる必要があります。それが上図の6つの項目です。①ワラの発酵分解の主役となる納豆菌を発酵鶏糞で供給する。②納豆菌が活動できる温度は18℃以上。よって収穫後、できるだけ早く、寒くなる前に秋ワラ処理を行う。③納豆菌はpH=6.5以上でなければ活動できません。よって、土壌分析を行い、施肥設計に基づき、カキガラ石灰と水酸化マグネシウムを施用してpH=6.5以上に調整する。④納豆菌が増殖するために必要な窒素を発酵鶏糞で供給する。ワラと発酵鶏糞が混ざり、C/N比率が25以下になると発酵が促進される。ワラのC/N比率=50なので、ワラ100㎏あたりN=2.5%でC/N比率7の発酵鶏糞がの場合、40㎏必要となります。⑤水分と酸素が必要なので、トラクターで耕起して、深さ10㎝程度に浅くすき込む。湛水してはいけない。⑥必ず耕起して、しっかり混和する。土中なら水分が保持されて発酵が進みます。


(4)発酵鶏糞の施肥量はワラ量で決まる
発酵鶏糞の施肥量は、お米の収穫量(ワラの量)に比例して増えます。秋ワラ処理に施用した発酵鶏糞の窒素は、半分は失われ、半分は地力となって、翌年のお米栽培に効いてきます。



(5)発酵鶏糞の選び方・良し悪しの見分け方試験方法
使用したい発酵鶏糞をジップロックに少量入れて、塩素の入っていない水がよいので水道水はダメ、無菌の水が良いので市販のミネラルウオーターを入れて、温かいところに3日ほど放置して、発酵鶏糞をさらに発酵させます。香ばしい匂いがしたら使用に耐え得る発酵鶏糞です。腐った臭い、鼻がもげるような悪臭、きついアンモニア臭、ウンコの臭いがしたら、その発酵鶏糞は、発酵が不十分か、または腐敗していますので使用不可です。


(6)圃場の土壌がすでに腐敗している場合の対策
用水の水質が悪い場合、水田の土壌に、すでに腐敗菌が多く棲み着いている場合があります。その場合は秋ワラ処理がうまくいかない場合があります。調べ方は土壌の臭いをかいでみて、ドブ臭い場合は、腐敗菌が多い土壌です。腐敗菌が多い土壌で「秋ワラ処理」を行う場合は、発酵菌を散布して腐敗しないように工夫する必要があります。使用する発酵菌は3種類使用します。①納豆菌(ワラを発酵分解を促進する主役)、②乳酸菌(乳酸をつくり腐敗菌の活動を抑制します)、③光合成細菌(硫化水素を食べて光合成を行なう細菌で、硫化水素を除去します。)


(7)秋ワラ処理がうまくいった場合の土壌の変化
秋ワラ処理がうまくいった場合、土壌は団粒化し、土壌に埋没している種子が土壌から離れて、休眠のブレーキが打破されて、発芽し易くなります。冬の寒さが厳しくなっていく中、通常なら発芽しない雑草の種子が、発芽してしまいます。発芽した雑草によって芝のようになりますが、冬の寒さによって大きくはなりません。このまま春まで放置し、基肥を施用した後に耕起して、土壌にすき込んでよいです。


(8)秋ワラ処理によって土壌が団粒化する
上図の水稲収穫後の土壌の断面の写真です。


一番上には、トロ土層が形成されています。その下にはぼそぼそとした団粒化した土壌が形成されています。その下は耕盤層です。耕盤層はトラクターのロータリー耕によって押し固められたものです。その下は岩盤です。


秋ワラ処理によって土壌が団粒化すると、稲株を引き抜いて、振るうだけで、土がパラパラと落ちて、根が露わになります。




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