根量を増やす団粒構造
上図(左)は、有機物が入っていない土壌です。学校の土のグラウンドのような硬い土壌です。土が硬く締まっているために、作物は根を伸ばすのに非常に苦労をします。さらに、雨が降る度に、土が含んだ水分の重さによって、圧し潰されて、岩石の粒子はギュウギュウに詰まってしまい、間隙がほとんどなくなってしまいます。間隙がないため、雨水は岩石の粒子の隙間に浸透することができず、表層に留まり、水たまりをつくります。そして、土はすぐに乾いて石のようにカチカチになってしまいます。雨が降れば水浸し、乾けばガチガチという、植物が生きていくには、とても過酷な環境です。
上図(右)は、有機物を多く含んだ土壌です。スポンジのように間隙が多く、フカフカしています。植物の体は水分を除いた乾物の4割はセルロースでできています。セルロースはブドウ糖を鎖状につないで紐にしたものを、さらに束ねてつくられた結晶体です。植物の残渣のセルロースは、土壌微生物のエサとなり、土壌微生物に分解されて、糊状の水溶性炭水化物になります。水に溶けて岩石の粒子の間隙に浸みていき、土壌微生物に食べられて二酸化炭素ガスを発生します。この二酸化炭素ガスの発生によって生じる体積増加によって、まるで爆破するように膨張し、ギュウギュウ詰めだった岩石粒子はバラバラに粉砕されます。そして夜になって温度が下がると、間隙の糊状の水溶性炭水化物は周囲の粒子をくっつけつつ、収縮・凝集して団粒構造をつくります。岩石粒子が凝集し収縮することで、できた多くの間隙により、土壌はまるでスポンジのようになり、この間隙に適度な水分と空気が確保されます。
この間隙の多い団粒構造になることで、植物の根は適度な水分と栄養成分と細胞分裂を行う時に必要な酸素をしっかり得ることができるようになります。根はたくさん分岐し、さらに細かい根が増え、根毛も増えます。根量が多くなることで、栄養吸収量も増えて、葉緑体の光合成能力も向上し、ブドウ糖の生産量が増えます。これによりブドウ糖を原料にしているつくられるビタミンや抗酸化物質の生産量も増えます。植物は健康に育つようになり、収量・品質・病害虫抵抗能力が向上します。
団粒構造の土壌はスポンジのような構造なので、フカフカで、よく発達すると、まるでトランポリンのように弾むような土壌になります。そして、雨が降れば、雨水は間隙に浸み込んでいき、適度に保水され、必要以上の水は、水自体の重さで、下方向へ落ちていき、排水されていきます。
上図(右)のように団粒構造は、セルロース由来の糊状の水溶性炭水化物で支えられています。この糊状の水溶性炭水化物は、土壌細菌のエネルギー源として、常に二酸化炭素と水に分解されて、土壌から失われていっています。自然生態系の土壌では、土壌細菌による分解よりも、植物によるセルロースの供給量の方が多いため、団粒構造は、長い時間をかけて、ゆっくりではありますが、次第に生長していきます。ところが農業生産では、トラクターで深く細かく耕し、栄養成分を肥料を使って施用し、潅水もします。これらのことは、作物をより良く育てるために行っているのですが、これれのことは土壌細菌も活性化させて、団粒構造を支えている糊状の水溶性炭水化物の分解を促進してしまいます。
糊状の水溶性炭水化物を失えば、団粒構造は維持できなくなり、上図(左)のように、有機物を失えば失うほど、岩石が砕けた粒子だけとなり、雨が降る度に、圧しつぶれて、カチカチになっていってしまいます。間隙が無くなるほど、保水力もなくなり、保肥力も低下し、根の張りが悪くなり、作物の生育は悪くなっていきます。
しかし、原因がはっきりしているなら、対処もできます。足りないものは、団粒構造を支えている糊状の水溶性炭水化物なので、これを補えば良いのです。セルロースを生のまま、施用しても団粒化の効果が乏しいため、施用する前に、予め好気発酵によって、セルロースを糖や有機酸に加水分解し、糊状の水溶性炭水化物の状態にしてから施用します。これが堆肥です。
