2025年8月29日金曜日

【有機水稲⑦】抑草技術

 【有機水稲栽培⑦】抑草技術
(1)雑草は土壌を守るために生えてくる
土壌は植物がつくったものです。植物はセルロースを、土壌細菌に供給し、土壌細菌によって、セルロースを糖や酸に分解してもらい、岩石の砕けたもの混ぜていき、長い年月をかけて土壌をつくり育てています。セルロースが分解してできた水溶性炭水化物は、団粒構造を形成し、水分を保持し、酸によって岩石からミネラルを溶かし出し、酸のキレート作用によって、植物の根が吸収しやすい水に溶けた状態を保持します。


雑草の種子はたくさん土壌に埋まっています。雑草の自然生態系の中での役割は、土壌を守るためです。土壌が草で覆われない状態、つまり裸地になった場合、土壌に埋まっている種子が直ちに発芽して、葉を広げて、陰をつくり直射日光が土壌に当たって乾燥するのを防ぎます。雨が降った場合は、葉が雨水を受け止めて、細かく砕いて、霧のようにして、雨水の爆撃によって土壌の団粒構造が壊れることを防いでいます。植物は土壌をつくり、土壌を守ってもいるのです。

雨量が少ないアメリカなどでは、雑草を活用して土壌を守る不耕起栽培も実施されていますが、雨量が多く温暖な日本では、作物は、雑草に生存競争で負けてしまいます。よって、日本での栽培では、雑草をいかに抑制するかも重要な技術のひとつになります。

雑草が生えて来ないようにするには、土壌に埋没している雑草の種子を減らす必要があります。雑草の種子を減らす方法は、発芽させてから殺すのが基本です。①イネ栽培の場合は、秋ワラ処理を行うことで、ワラの発酵分解に、雑草の種も巻き込んで、いっしょに発酵分解させてしまいます。②ワラが発酵分解することで、土壌が団粒構造になり、種子が土壌から離れやすくなり、発芽し易くなります。また、ワラが分解してできた酸や乳酸菌のような酸をつくる細菌がつくる酸によって、雑草の休眠が弱くなり、冬に向かって発芽してはいけない時期に発芽し、そのまま凍えてしまいます。


上図のように、冬の水田に、雑草が一斉に発芽して草原のようになっていたら、雑草が減っています。この草は春まで、このままの状態で放置して、基肥を施用して耕起しても大丈夫です。

(2)発芽する雑草の種は表層5㎜の所にある
代かきを行うことで、雑草の種は、種子自体の浮力によって表層に浮き上がってきます。そして表層から5㎜の深さにある雑草の種子が一斉に発芽してきます。5㎜よりも深い所にある種は、そのまま休眠したままとなります。雑草の種は表層のごく浅い所にあるということが、抑草のヒントとなります。代かきの後、すぐに田植えを行い、田植えの直後に、表層に肥料や米糠などを散布することで、①濃度障害、②有機物が分解することで発生する有機酸、③土壌細菌が増殖することで酸素が急激に消費されてることによって発生する酸欠などによって、発芽したての雑草の新芽を焼いてしまい殺します。これが基本の抑草技術となります。

(3)抑草技術には3パターンがある
①微生物の活性化による酸欠抑草
アミノ酸肥料や米糠を表層に散布することで、土壌細菌の増殖を促し、土壌の表層の酸素を消費しつくしてしまうことで、発芽したての雑草の芽を酸欠で殺してしまいます。米糠など生有機物を散布した場合は、腐敗してしまい硫化水素などが発生します。硫化水素は水によく溶け、発芽したての雑草の芽が、硫化水素が溶け込んだ水を吸収してしまった場合は死んでしまいます。硫化水素は水の中に溶けている鉄イオンと化合して真っ黒な硫酸鉄をつくります。米糠などを散布して、イネの株本が黒く染まっていたら、それは硫化水素が発生し、その後硫酸水素が、水の中に溶けていた鉄イオンと反応して硫酸鉄になり、イネの茎に付着して、茎を黒く染めたものです。
②酵母菌がつくる二酸化炭素による濁り抑草
アミノ酸肥料と酵母菌培養液を散布することで、酵母菌がアミノ酸を食べて増殖し、二酸化炭素を発生します。二酸化炭素の発生で表層の泥が巻き上げられて、水が濁り、光が届かなくなることで、発芽したての雑草の芽の光合成を阻害し殺してしまいます。また舞い上がった泥が沈殿して厚いトロ土層が形成されます。雑草の種は、トロ土層に埋まってしまい発芽することができなくなります。
③消石灰散布による強アルカリ抑草
消石灰を散布することで表層を強アルカリにして、発芽したての雑草の芽を焼いてしまい、殺してしまいます。強酸性側にすることでも同じ効果がありますが、酸性側では、ミネラルもよく溶け、栄養成分の分解も促進され、雑草自体に栄養として供給されてしまう場合があり、雑草を殺すはずが、より勢力を旺盛にしてしまうことが起きる場合があります。よって、消石灰を使って、雑草の種がある表層を、強アルカリ側に傾けるのが無難です。

田植え機の側条施肥機を使って、田植えと同時に、表層にアミノ酸肥料をまんべんなく散布することができます。


側条施肥機は土壌中へ肥料を埋め込むように注入する機構になっていますが、この先の部分を取ってしまい、水面に肥料がパラパラと落ちるようにします。


水が濁り、光が遮断されて、雑草が死滅します。硫酸還元細菌が働いた場合は、イネの株本が硫化鉄によって黒くなります。硫酸還元細菌は酸素が多い環境では生きていけない細菌なので、酸欠状態になっていた証拠となります。


溶存酸素が低下し、エラ呼吸をしている生物は、水面近くに上がってきて、しきりにエラを動かして酸素を得ようとしています。これも酸欠状態になった証拠です。

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